馬術 A to Z

馬術の基礎知識や人に教えたくなる豆知識を、AからZまでの26文字で始まるキーワードでご紹介します。


【オール エイジズ】

他競技にはない、年齢層の幅広さが特徴!

他のスポーツにはないユニークな特徴が多くある馬術。そのひとつに選手の年齢層の幅広さがあります。2012年ロンドンオリンピックの馬場馬術競技に出場した法華津(ほけつ)寛選手(写真右)は71歳でした。2016年リオオリンピックの障害馬術チャンピオン、ニック・スケルトン選手(イギリス:写真左)は出場時58歳。1988年ソウルオリンピックに初出場してから7度目のオリンピックで、馬術史上最高齢の金メダリストに輝きました。馬術の世界では、人生の円熟期を迎えた数多くの選手たちが第一線で活躍しています。


【ビット】

ハミ。馬とコミュニケーションをとるための馬具

ハミは、乗り手が馬とコミュニケーションをとるための道具です。馬の口の中に入れて手綱とつなぎ、乗り手が拳を繊細に使うことによって、馬に方向や前進・後退などの指示を伝えることができます。金属製のものが一般的ですが、当たりの柔らかいプラスチック製やゴム製のものもあります。また、形状も2本の棒をジョイントしたものが一般的ですが、棒にねじりを加えたものや、ジョイント部分をダブルにしたもの、ジョイントがなく1本の棒でできているものなど、バリエーション豊富です。馬の個性に応じて効き方を考慮して選びます。


【クロスカントリー】

総合馬術のなかの1種目

総合馬術競技の2日目に行われ、野山を人馬一体で駆け抜けるのがクロスカントリー競技。自然に近いコースに竹柵や丸太、水濠や池などバリエーションに富んだボリュームのある障害物が設置されます。大きな大会になるとコースの全長は6kmを超え、障害物の数は30~40個ほど。それらを飛越しながら分速570m(時速約30km)ものスピードで走ります。障害物は固定されているので、踏み切りのタイミングが合わないと転倒の危険もあり、人と馬との信頼関係とテクニック、そして勇気が必要。とてもエキサイティングな種目です。


【ドレッサージュ】

馬場馬術

20m×60mのアリーナの中で人馬一体の演技を行う馬場馬術。様々なステップを踏みながら、図形を描き、その美しさや正確性を競う、馬に乗って行うフィギュアスケートのような種目です。馬への合図は、選手の拳や脚、そして体重の移動。その合図が小さいほど馬が自ら演技しているように見えます。人馬のハーモニーと、そこから紡ぎ出される馬の美しい動きが見どころです。


【イベンティング】

総合馬術

総合馬術は、3日間かけて馬場馬術・クロスカントリー・障害馬術の3つの種目を同じ人馬のコンビネーションで戦う、トライアスロンのような種目です。3種目の中の花形、クロスカントリー競技は、自然の地形を活かした数kmに及ぶコースに、丸太や池、竹柵(ちくさく)、水濠(すいごう)、乾壕(かんごう)などのボリュームのある障害物が設置されます。トップレベルの競技では、分速570m(時速約30km)で障害物を飛び越しながら走る、迫力満点の種目。人馬ともにタフさと勇気が必要です。


【エンデュランス】

160kmを駆け抜ける!馬のマラソン

エンデュランスは“馬のマラソン”とも言われる種目で、トップレベルの競技では160kmにも及ぶ長距離を走ります。最も大切なのは、馬が良いコンディションにあること。コースは複数の区間に分かれていて、ひとつの区間が終わるごとに、獣医師による検査に合格しなければなりません。選手はもちろんのこと、チーム一丸となって馬のケアに努め、すべての検査をクリアして完走することこそが最大の目標なのです。


【エフ・イー・アイ】

国際馬術連盟

世界の馬術競技をつかさどる国際組織で、日本は1921年の創立8ヵ国の一つです。本部はスイスのローザンヌにあり、136の国・地域の連盟が加盟しています(2023年6月1日現在)。オリンピック競技である馬場馬術、障害馬術、総合馬術に加え、エンデュランス、馬車、軽乗、パラ馬術の7種目を管轄しています。国際ルールの制定や選手のランキング等を行っています。



【ジェンダー ニュートラル】

男女が同じフィールドで戦い抜く!

オリンピック競技の中で唯一、男女の区別なく行われるのが馬術競技。選手と馬とが信頼関係を築くことで、力ではなく、選手のちょっとした合図で馬が動いてくれるようになります。つまり、体力的な面を馬がカバーしてくれるのです。そのため、表彰台のトップに女性選手が立っているという光景も珍しくありません。事実、オリンピックの馬場馬術個人戦では2000年シドニー大会から2021年東京大会まで、表彰台に上がったのは全員女性でした。


【ホース】

馬。選手の大切なパートナー

馬とともに行うスポーツ、馬術。馬がいなければ、どんなに卓越した技術を持った選手でも、競技に参加することも、結果を出すこともできません。馬術競技には障害馬術、馬場馬術、総合馬術、エンデュランスなどいろいろな種目があり、その種目に適した馬を、じっくりと時間をかけて育てます。世界トップレベルの競技に出られるようになるまでには長い時間が必要で、そのためオリンピックでは、障害馬術:9歳以上、馬場馬術:8歳以上、総合馬術8歳以上という下限が設けられています。 海外では馬術用馬として、国や地方で独自の品種が生産されており、ドイツのハノーバー、ウエストファーレン、ホルシュタイナーや、オランダのKWPN、フランスのセルフランセなど多彩です。日本においては、競馬を引退したサラブレッドを乗用馬に転向させるケースが多く、また、岩手県遠野市や北海道根釧地区などで乗用馬の生産が行われています。


【インスペクション】

馬の競技参加適性をチェック

競技開始前あるいは競技期間中に設けられた、獣医師と審判員による馬のコンディションチェックのことで、正式にはホースインスペクションといいます。その馬が競技に参加する健康状態にあるかどうかを確認するもので、馬体の傷や疲労程度の確認、歩様検査などを行います。「Accepted(合格)」とコールされれば競技に参加できますが、「Not accepted(不合格)」と判断されたら、出場することができません。


【インターナショナルイベント】

国際馬術競技会

FEI(国際馬術連盟)が公認する国際馬術競技は、種目別に次のように表示されます。
CSI:Concours de Saut d’Obstacles International 国際障害馬術競技
CDI:Concours de Dressage International 国際馬場馬術競技
CCI:Concours Complet d’Equitation International 国際総合馬場術競技
CEI:Concours d’Endurance International 国際エンデュランス馬術競技


【ジャンピング】

障害馬術

アリーナに設置された障害物を、決められた順番通りにミスなく飛び越し、早くゴールする種目で、障害物を落としてしまったり、障害物の前で止まってしまったりすると減点です。ミスなく飛び越すためにベストの踏み切り地点に馬を誘導し、タイムを縮めるために小回りをさせるのは、選手の仕事。選手と馬が力を合わせて颯爽と走り抜ける姿は、華麗で迫力に満ちています。


【カルイザワ】

夏季と冬季、両方のオリンピックが行われた町

長野県軽井沢町は夏と冬でオリンピック競技会場となった町。1964年の東京大会では総合馬術競技が行われ12カ国から48人の選手が参加しました。また1998年の冬季長野大会ではカーリングが行われました。町内の風越公園内に両大会の聖火台が保存されており、当時の興奮の面影を今に伝えています。
2021年の東京オリンピックの馬術競技は、メイン会場が世田谷区のJRA馬事公苑、総合馬術のクロスカントリー競技は海の森クロスカントリーコースで行われました。


【メイン】

たてがみ。馬の魅力をさらに引き立てる美しい存在

馬の特徴の一つに、たてがみがあります。長いたてがみをなびかせて走る馬の姿は美しいですね。特に、スペイン原産のアンダルシアンホースのたてがみはピカイチです。また、馬術競技、特に美しさを競う馬場馬術競技においては、たてがみを編むのが常識。愛馬をおしゃれに仕上げて競技に臨みます。ループ編みやお団子など編み方も様々ですので、どんな編み方をしているのかを見比べるのも馬術競技観戦における1つの楽しみですね。


【ニシ タケイチ】

西竹一。日本人唯一のオリンピック金メダリスト

1932年(昭和7年)のロサンゼルスオリンピック、大障害飛越競技で優勝した西竹一は、1902年(明治35年)に男爵家の三男として生まれ、陸軍幼年学校時代から馬に乗り、陸軍騎兵学校で技術を磨きました。ウラヌスという素晴らしい馬とのコンビで、1932年8月14日、オリンピックの舞台で出場11人馬中完走5人馬という厳しいコースを制して金メダルを獲得しました。社交的で英語も堪能だった西は、欧米の社交界でも「バロン西」と呼ばれて親しまれ、ロサンゼルス名誉市民にもなりました。4年後のベルリンオリンピックでは、アスコットという日本生まれの元競走馬に乗って、総合馬術競技で12位。その後のインタビューで、西は「ベルリン大会には、日本でもこういう良い馬ができるということを外国に宣伝してやろうと、3年間苦労して調教した国産馬アスコットを持って行ったのです。馬の素質を考え合わせ、調教の苦労を買ってもらって、あの馬でよくあれだけやったという理解がほしいと思いました。今後人びとが、少なくとも馬を見る、馬に接するといった気分になってくれると、私たちの戦ってきたオリンピックの道そのものも、非常に有意義になるのではないかと思います」と話しています。
終生馬を愛した西は、第二次世界大戦末期の1945年(昭和20年)、硫黄島で戦死、享年42でした。
《参考資料》「ベルリン大会と西 -国産名馬アスコット-」吉橋戒三著


【オリンピック ゲームズ】

オリンピック競技大会

オリンピックにおいて、馬術は、歴史と伝統のある競技です。紀元前の古代オリンピックでも馬を用いた競技として、戦車競技(シャリオ・レース)が行われていました。近代オリンピックでは第2回となる1900年パリ大会に障害馬術が登場し、1924年パリ大会からは現在と同じ、馬場馬術、障害馬術、総合馬術の3種目となりました。現在は、各種目の団体戦と個人戦が行われています。


【パラ エクエストリアン】

パラ馬術

障がいのある選手のための馬術競技で、馬場馬術(ドレッサージュ)と馬車(ドライビング)の2種目があります。パラリンピックではパラ・ドレッサージュのみが実施されています。障がいの程度によって5つのグレードに分けられ、グレードごとに演技課目が異なります。また、個々の障がいの状況に応じて、特殊な馬具や道具の使用が認められます。パラ・ドレッサージュが初めてパラリンピックで実施されたのが1996年、パラ馬術がFEI(国際馬術連盟)が扱う種目となったのは2006年でした。


【クイーン】

馬場馬術の女王たち

人馬一体の演技でその美しさや正確性を競う馬場馬術では、2000年シドニーオリンピックから6大会続けて個人戦の表彰台に上ったのはすべて女性。2012年のロンドン、2016年のリオで連覇を達成したイギリスのシャーロット・デュジャルダンはリオで金メダル獲得直後に会場でプロポーズされ世界中から祝福を受けました。また、ドイツのイザベル・ヴェルトはオリンピックの馬場馬術個人で1回、団体で4回計5つの金メダルを獲得している実力者。これからも、馬とともに華麗に舞う女性ライダーの活躍は続きそうです。


【サドル】

鞍(くら)はとっても重要!

馬の背に置いて、その上に人がまたがるのがサドル(鞍)。革で作られ、腹帯(はらおび)と呼ばれるベルトを使って馬に装着します。競技種目によってデザインが異なり、障害馬術では飛越時の前傾姿勢がとりやすいように、馬場馬術では真っすぐなきれいな姿勢が保ちやすいように、それぞれ工夫されています。


【サラブレッド】

速く走るために生まれてきた馬

競走馬の代名詞でもあるサラブレッドという名称は、「THOROUGHBRED」というスペルからわかるように、「徹底的に(THOROUGH)品種改良されたもの(BRED)」という語源からきています。 強く速い馬の血を残し、さらに強く速い馬をつくりだして、優秀な血統が受け継がれていきます。
日本では、競馬を引退したサラブレッドが、乗用馬・馬術競技馬に転向するケースも少なくありません。
(引用:JRAホームページ)


【ユニバーシティ】

その歴史は明治期から。学生自ら馬の管理をしています

日本の大学で初めて馬術が取り入れられたのは130年以上も前のこと。1879年(明治12年)10月18日に現在の学習院大学の前身である学習院の神田錦町校舎(当時)にて「馬術開業式」が行われ、正規科目のなかに馬術が取り入れられたとの記録があります。
大正時代には旧帝国大(現在の国立大学)や私大で続々と馬術部が創設されました。そして1928年(昭和3年)には現在の全日本学生馬術連盟の前身である日本学生馬術協会が設立。翌1929年に第1回全日本学生馬術選手権大会が開催され、同志社大学の岩坪正治選手が優勝(個人)しています。
現在、全日本学生馬術連盟の加盟校は79校。大学施設内に馬場を持つ大学も多く、部員自ら馬の管理をしています。毎年秋に行われる全日本学生馬術大会には各地区の予選を勝ち抜いた選手と馬が集結します。障害馬術競技・馬場馬術競技・総合馬術競技の3種目総合優勝は皆が目指す最高の栄誉。2011年から日本大学が12連覇中です。


【ベニュー】

競技会場。全日本馬術大会が行われる拠点を紹介

日本馬術連盟が主催する全日本大会等を実施する国内の主な競技場を紹介します。

【御殿場市馬術・スポーツセンター】

富士山の麓に位置する競技場で、ナショナルトレーニングセンター競技別強化拠点(馬術)に指定されています。屋外競技場2面と屋内競技場2面があり、競技会だけでなく、強化訓練や合宿も行われます。

【山梨県馬術競技場】

八ヶ岳南麓の標高1000mに位置する、森林に囲まれた競技場。障害馬術、馬場馬術だけではなく、総合馬術競技のクロスカントリーコースを有しています。小淵沢町は《馬の町》を標榜しており、毎年夏に《八ヶ岳ホースショー in こぶちさわ》が行われるなど、馬に関連したイベントや気軽に乗馬を楽しめる施設があります。

【三木ホースランドパーク】

兵庫県三木市にある三木ホースランドパークは、馬術競技場や宿泊施設、キャンプ場などを備えた施設で、国内最大級の総合馬術競技のクロスカントリーコースを持っています。競技会開催だけではなく、引き馬・馬車試乗会やにんじんタイムなど馬とふれあえるイベント、体験乗馬やホーストレックなどを楽しむことができます。

【JRA馬事公苑】

東京都世田谷区にあるJRA(日本中央競馬会)が所有する施設。昭和15年(1940年)に開設され、昭和39年(1964年)の東京オリンピックでは、馬場馬術競技の会場および参加馬の厩舎となりました。全日本大会、全日本学生馬術大会、高校馬術選手権、JRAホースショーなど、数多くの大会が行われてきました。2021年の東京オリンピック・パラリンピック大会の馬術競技が行われ、現在は再オープンに向けて準備中です。


御殿場市馬術・スポーツセンターは富士山を望むロケーション


【エックス】

馬場馬術競技アリーナの中央を示す文字

馬場馬術競技は20m×60mの長方形のアリーナで行われますが、アリーナ周囲とアリーナ内の位置を示すために、17のアルファベットが使われています。その中でアリーナの中央を示すのが《X》です。オリンピック馬術競技で初めてこのアルファベットが使われたのは、1920年に開催されたアントワープ大会でした。この17のアルファベットにはどのような意味があるのでしょうか? 有力な説は2つ。一つはローマ帝国に征服された都市の頭文字という説です。もう一つはドイツ帝国の宮廷にある厩舎の壁に示されていた、誰の馬なのかを示す文字という説。たとえばK:Kaiser(皇帝)、F:Furst(王子)などで、アリーナ周囲の10文字については、元になる言葉が示されています。しかし、中央線上のA、D、L、X、I、G、Cについては言及されていないのです。……つまり、《X》の由来は誰にもわからない、ということですね。


【ユース オリンピック ゲームズ】

ユースオリンピック競技大会

ユースオリンピック競技大会は、2007年の国際オリンピック委員会(IOC)の総会で、ジャック・ロゲIOC会長(当時)が、青少年にもオリンピックを体験させようと提案したことがきっかけでスタートした、15~18歳の選手が対象の大会です。第1回大会の夏季大会が2010年にシンガポールで行われ、馬術は、障害馬術競技の1種目のみが行われています。


【ジンバ】

A to Z + Jinba

サイト名の一部。
馬術競技は、人と馬が心を通わせ、人馬がひとつになるところが魅力です。その心を馬術では “人馬一体(じんばいったい)”と呼びます。
このサイトは、「馬術のことなら何でもわかる!」を目指し馬術のAからZ(A to Z)を通して、人馬(Jinba)のことを大好きになってもらえるようにという想いでA to Z と Jinba を掛け合わせ、「A to Zinba」(エートゥージンバ)と名付けました。