馬術とは、馬とともに行う競技スポーツ。
オリンピックで実施されるのは障害馬術、馬場馬術、総合馬術の3種目ですが、
そのほかにもエンデュランス、馬車、軽乗とバラエティ豊かです。
ここでは4種目を紹介します。
アリーナと呼ばれる競技場内に設置された13~15個の障害物を、決められた順番通りに飛び越し、より早くゴールすることを競います。
より早くゴールするためのコース取りや飛び越すタイミングを選手が素早く的確に判断し、その判断に馬が瞬時に反応できるかどうかがポイントです。 オリンピックなどの世界最高レベルの競技会の障害物では、高さ160cm、幅(奥行)2mを超えるものもあります。
障害馬術には大きく分けて「標準競技」と「スピード&ハンディネス競技」の2種類があります。
「標準競技」は、障害物を落下させると1回につき減点4、障害物の前で馬が止まってしまう(「反抗」と呼びます)と、1回目は減点4、2回目は「失権」となり、その時点で走行を終えなければなりません。規定時間内で減点が少ない人馬が上位となります。同点の選手が複数いた場合は、障害物を減らした「ジャンプオフ」という1位決定戦で、再度競います。
「スピード&ハンディネス」は、障害物を落下させたときの減点を走行タイムに換算して競う種目です。障害物の落下1回ごとに、走行タイムに4秒加算されます。障害物を落下させても、早くゴールすれば、障害物を落とさずにゆっくり走った人馬に勝つこともあります。
馬の動き(演技)の美しさと正確さを競う種目です。
20m×60mの長方形のアリーナの中で、馬の様々なステップや図形を描くような動きの正確性と美しさを審判員が採点します。フィギュアスケートに似ていると言われる種目です。
馬場馬術には、プログラム(演技内容)が決まっている「規定演技」と、選手が演技の構成をして音楽に合わせて行う「自由演技」があります。
「規定演技」、「自由演技」とも、演技の項目ごとに10点満点で採点され、成績は得点率で表示されます。世界トップの人馬の演技では、ほぼ満点と言える90%を超えることもあります。
馬のステップには、肢(あし)を高く上げて気取って歩く「パッサージュ」、その場で足踏みをするような「ピアッフェ」、左右の肢を深く交差させる「ハーフパス」、そしてスキップをしているかのような「フライングチェンジ」などがあります。その動きはもはや芸術です。
同じ人馬のコンビで、3日間をかけて馬場馬術、クロスカントリー、障害馬術の3種目を行います。
メインの種目はクロスカントリー。自然の地形をいかした数kmにわたるコースに、丸太や生け垣、水濠(すいごう)、乾壕(かんごう)、竹柵(ちくさく)などの障害物が30~40個設置されます。トップレベルの大会では時速30km以上で疾走しながら、様々な障害物を果敢に飛び越していきます。人馬ともにスタミナと勇気が不可欠です。
●主な障害物
クロスカントリーを無事に走り切ったら、いよいよ最終種目。3日目の朝には審判員と獣医師が、馬が障害馬術に出場できるコンディションにあるかどうかをチェックします。馬に無理をさせないための大切な検査で、これに合格して初めて、最後の障害馬術に臨むことができるのです。
3種目それぞれが減点法で審査され、総減点が少ないコンビが上位になります。まさに人馬の総合力が試されるタフな種目です。
© FEI
エンデュランスは、人馬で挑むマラソン種目です。
マラソンといっても、トップレベルの大会では走行距離160kmもある厳しいレースです。30~40kmのフェイズ(区間)に分けられ、フェイズが終わるごとに獣医師による検査があります。検査に合格したら、決められた時間休憩をして次のフェイズに向かいます。
エンデュランスでは、馬の体調管理が大切です。
体温や心拍数、全身の状態をチェックし、「体調が悪い」と判断されたら、その場でレースを終えなければなりません。そうならないために選手は馬の状態を考慮しながら走り、コース上の決められたポイントや各フェイズを終えたところで、クルーが馬に水を与えたり、体を冷やしたりと、万全を尽くします。
良いコンディションをキープしたまま、より早くゴールした人馬が上位になります。また、ゴール後のコンディションが最も良かった馬には「ベストコンディション賞」が与えられます。中には、優勝よりも「ベストコンディション賞」に選ばれるほうが名誉と考える選手もいます。
© FEI